エッセー
ダムは完成してからでは撤去は困難だ。ダムを作る前に既設ダムの検証を! 2006年2月1日
PG04
さて、ダムの下流で砂利が失われ、「河床低下」が進行するとどうなるだろうか。
川岸との落差が開き、川岸から石がズリ出し、転げ落ち、やがて川岸が連鎖的に崩壊し始める。こうなるともう止まらない。次々に川岸の立ち木も倒れこみ、土砂の産出と流木の発生が見られ、川を流れる水は泥水となり、沿岸を茶色に染めることになる。今、北海道中の川はちょっとした雨で泥水が流れる川となっている。ダムの影響が強く現れているとみてよい。やがて川底がより深く掘り込み、それに伴って、川岸は崩壊を繰り返し、川は川幅がどんどん広がっていく。
川岸が崩れ始めた頃、川底の砂が目立ち、泥が沈殿しているのが見られるようになる。遊楽部川の上流では泥水が流れるようになったこの頃から、ハナカジカやフクドジョウ、ウキゴリ、ウグイが姿を消し始めた。川底に沈殿した砂や泥が魚の繁殖に影響を与えたとみられるのだ。つまり、川底の石の隙間を流れる水が砂や泥で石の隙間に沈殿して、この水の流れが遮断され、卵が育たなくなったとみられるのだ。川底の透水性が失われた頃、魚がいなくなり始めたわけだ。
現在の川底は大きな石が見られなくなり、小さな石は砂に埋もれ、石の表面は泥がかぶっている。当然、石の下に棲む水棲昆虫の種類が減り、数が減って、持ち上げた石にわずかにみられる程度となった区間もある。
しかし、水質は良好で、清流コンテストでは日本一となってもおかしくないのである。
さて、更に河床が下がると、今度は地下水が抜かれ始める。これは湿地帯を農地化するときに、深くV字溝を掘って、水を抜き、乾燥化させるのと同じことになる。
地下水が抜かれることは、大地の地下水が減少し、地下水の水位が下がることでもある。したがって、周辺の農地で利用している井戸水が涸れるのである(遊楽部川のサケの捕獲場や沙流川の二風谷ダム下流、様似川の様似ダム下流で井戸水が涸れたという)。
サケはわき水のある川底に産卵する習慣がある。したがって、川底からわき出すわき水の量にも影響するはずで、わき水の減少とともに、産卵場が減少、あるいは消滅していることも考えられる。
このようにダムは川の仕組みを根底から変え、川に生息する生き物たちの生息環境を変えてしまうばかりか、人間が生きていくために必要な水まで失わせる重大な影響があるものなのだ。
では影響が現れたらダムが撤去できるかというと困難な問題が立ちはだかる。ダムの影響が現れてからでは、ダムの上流の砂利では下流で失われた砂利を補うだけの量が確保できなくなるのだ。
八雲町の砂蘭部川では、ダムを撤去してもダムの下流の砂利を補うだけの砂利はなりとして、撤去に難色を示している。こうした理由で撤去ができなくなるのだ。これがダムを建設してきた河川管理者の姿勢であり、無責任きわまりない対応なのである。
「だったら、ダムは造るなよ!」と苦言を呈したくなる。だから、ダム建設の計画の時点で、既設のダムの検証をさせることがとても重要になるわけだ。治水・利水・水道水源としてたとえ必要性があっても、ダムを造る前に十分な論議がさせる仕組みを作らなければならない。
ダムができてからでは手遅れだ。
行政は逃げるだけだ。行政に逃げられないようにしてもダムの撤去は困難となる。小さな砂防ダムですらこの有様だ。大規模なダムであれば、なおのことダム撤去は困難を極めるだろう。
北海道中のダムを見て、ダムの影響の兆しが見られた時点で、即刻、撤去に踏み切ることが今やれる最も容易な方法かも知れない。このことを肝に銘じ、ダム建設の前に既設ダムの現場検証をし、建設を断念させることが最も有効であり、必要なことだと思う。